会社を経営している方が亡くなった場合、会社と社長個人の財産を分けて考えていく必要があります。今回は有限会社、株式会社など会社経営者が亡くなった場合の相続について解説していきます。
社長の死亡時は株が相続財産となる
社長が亡くなった際、社長の相続財産としては、社長が保有している自社株が相続財産となります。もちろん、社長が事業に関係ない個人的に所有している家や車、預貯金なども相続財産に含まれます。
法律上、会社は法人として1つの人格を与えられていますから、社長個人とは別に存在しているものになります。社長が亡くなっても会社はなくならず存続し続けますので、事業継承と相続を分けて考える必要があります。
社長が亡くなると、あたかも会社そのものであったり、会社の財産や経営権などもすべて相続対象になると考えてしまいがちですが、あくまでも相続できるのは社長が保有していた自社株のみとなります。
そのほかに継承されるものは、社長個人が会社へお金を貸していた時には債権となりますので、これも相続されます。また、連帯保証人になっている場合には連帯保証人の地位も継承されます。
社長の保有していた株の分け方
株式の分け方ですが、基本的には2つの分け方があります。株式をそのまま一人の相続人に継承する方法と、相続人が複数いる場合には株式を分割して継承する方法です。
相続関係によって分け方は様々ですが、遺産分割協議によって分け方を決めることができます。
非公開株式の評価方法
非公開株式の評価方法は少し複雑で、その会社の財政状況などをみて評価額を算出する必要があり、会社の規模によっても算出方法が異なります。原則的評価方式として2種類があります。①類似業種比準方式 ②純資産価格方式 また特例的評価方式と呼ばれる③配当還元方式 もあります。
どの評価方法を使って算出するのかは会社の規模であったり、株主の状態によって変わりますので、相続税評価を出す必要がある場合には税理士や会計士に相談することをおすすめします。
株式を相続したら名義変更をする
社長の保有していた株を誰が相続するか遺産分割協議で確定したら、その通りに名義変更を行います。会社の株式名簿管理人がいれば管理人に変更する旨を伝えます。名簿管理人がいない場合には会社に相続した旨を伝えます。
会社の借金は相続人が払うのか?
会社に借金などの債務などがあった場合、会社名義で借り入れをしているのであれば、会社が返済をしていくことになりますので、相続人が直接借金を返済する義務はありません。
ここで注意が必要ですが、個人事業主や小規模な会社の場合には、お金を借り入れる際に社長が連帯保証人となっていることが多くあります。
連帯保証人の地位は相続で継承されますから、連帯保証人として借金を返していく義務が生じます。
会社の負債が多い場合や連帯保証人になっている場合
会社に負債が多い場合であったり、社長が連帯保証人となっていて債務が多い場合には相続放棄や限定承認を検討しましょう。相続放棄や限定承認には期限がありますので、なるべく早めに動くことをおすすめします。
相続放棄や限定承認に関しては下記の記事で解説しておりますので、よろしければ参考にしてください。
社長の地位と経営権は誰が継承するの?
社長が亡くなった後、社長の後任を決める必要がありますが、これは取締役会で決議をします。取締役会が設置されていない会社では定款に定めがあればその通りに選びますし、株主総会で決めることもあります。社長の株式を相続した相続人は株主ですから、株主総会での決議に参加して意見表明することができます。
会社から株式の売渡請求が来たけど売らなきゃダメ?
有限会社や小規模な株式会社の場合に株式に譲渡制限がついていることがほとんどです。譲渡制限株式は基本的に他人に譲渡をすることができません。しかし相続ではいったん株式は相続人が相続することとなります。
もともと譲渡制限株式は会社経営に影響を支障を及ぼさないよう、経営を大株主に集中させるために設定していることが多いため、相続で株式を得た人へ会社から売渡請求をすることができます。売渡請求を会社がするためには定款にその旨を記載しておく必要があります。
売渡請求が来た場合、相続人と売渡金額の協議を行う流れになります。協議が整わない場合には裁判所に決定をしてもらうことになります。裁判所の決定が下されれば売り渡さなくてはいけないことになりますので、遅かれ早かれ株式は手放す必要があります。
社長が亡くなった際の相続は財産状況が複雑になりがちです。早めに専門家に依頼することをご検討ください。