日本は世界でもトップレベルの長寿国です。超高齢社会となった今、相続人が認知症を患っていることも多いですよね。相続人の中に認知症を患っている方がいる場合、相続手続きはどのように行うべきか解説します。
相続人が認知症だと遺産分割協議ができない
相続人の中に認知症の方がいて、ご本人が判断・意思表示を行うことができない場合には遺産分割協議を行うことができません。遺産分割協議は法律行為なので、民法の規定により意思表示ができない方の法律行為は無効となってしまうのです。
相続人の中に認知症の方がいる場合には、「成年後見人」の選任を家庭裁判所に申し立てする必要があります。成年後見人はご本人に代わって法律行為を行ってくれますので、遺産分割協議を進めることができます。認知症の相続人がいるのにも関わらず、代理人を立てずに他の相続人がむりやり遺産分割協議を行った場合、遺産分割協議は無効となります。また後のトラブルにつながってしまうなどの危険性をはらんでいるため、成年後見人を立てることが大切です。
しかし成年後見人が選任されるまでには最低でも2,3か月かかってしまいます。そして成年後見人は相続手続きのためだけに選任されるものではありません。一度選任されるとその方が亡くなるまで成年後見人はその方の代理人として法律行為を行います。こういった理由から成年後見人を選任するのを躊躇してしまう方が多くいらっしゃいます。
認知症でも成年後見人を立てずに遺産分割する方法
認知症の方がいて、成年後見人を選任せずに相続手続きをしたい場合には、民法で定められている「法定相続割合」で遺産分割する方法があります。法定相続分で遺産を分ける場合には遺産分割協議をする必要がないため、成年後見人は必要ありません。
法定相続割合で遺産分割する場合には不動産の相続登記もそれぞれの法定相続分で共有することになります。例えば夫が亡くなり妻、子2人が相続人の場合、法定相続割合は妻1/2、子①1/4、子②1/4となり、不動産もこの割合で登記することになります。法定相続割合については下記の記事で詳しく説明しておりますのでよろしければご参考にしてください。
また、遺言書が残されていた場合には、遺産分割協議をする必要がないため、成年後見人を立てずに相続手続きを終えることができます。ただし遺言書が有効であり、相続人の遺留分を侵害していないことが重要なポイントとなります。
認知症の家族がいるなら遺言書を残すのがベスト
前述したとおり、認知症の家族がいる場合、遺言書を残しておけば成年後見人を選任せずに相続手続きを行うことができるため、相続人の負担が軽減されます。
遺言書は法的に有効なものであり、相続人の遺留分を侵害していないこと、相続財産に漏れがないように記載することが大切です。もし財産に漏れがあった場合には、その財産に関して遺産分割協議を行わなければならず、成年後見人を選任しなくてはならないからです。
残される家族のために遺言書を作成したいとお考えの方は、しっかりとご自身の意思を後世につなげるよう専門家に相談することをおすすめします。
月乃行政書士事務所では遺言書の作成サポートも行っておりますので、お気軽にご相談ください。