お亡くなりになった方が生命保険に加入していた場合、どんな相続手続きが必要となるのでしょうか?また相続税の対象となるのか、遺産分割財産となるのか分からないことも多いと思います。ですが生命保険はシンプルなのでご安心ください。

生命保険は相続財産に含まれる?

生命保険金(死亡保険金)は受取人の固有の財産となります。受取人固有の財産というのは受取人の財産ですので、純粋な相続財産とはなりませんので、遺産分割をする必要がありません。受取人が保険金を全額もらって大丈夫です。

死亡保険金の受取人が指定されている場合

生命保険の死亡保険金の受取人が指定されている場合には、受取人がそのまま受け取ることができます。遺産分割する必要はなく、他の相続人の許可なども必要ありません。

死亡保険金の受取人が指定されていない場合

生命保険の死亡保険金の受取人が指定されていない場合には、保険の約款に記載の通りに受取人が決まります。ほとんどの場合、相続人が受取人となっていると思います。
一度約款を確認することをおすすめします。

もし「相続人」が受取人となっていた場合には、全相続人が法定相続割合に応じて保険金を受け取ることになります。


最高裁の判例がありますのでご紹介します。

保険契約において保険契約者が死亡保険金の受取人を被保険者の「相続人」と指定した場合は、特段の事情のない限り、右指定には相続人が保険金を受け取るべき権利の割合を相続分の割合によるとする旨の指定も含まれ、各保険金受取人の有する権利の割合は相続分の割合になる。

裁判所https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52492

生命保険は相続税の申告対象!

生命保険の死亡保険金は受取人の固有の財産ではありますが、相続税がかかります。

相続税法上では死亡保険金は相続によって得たものとみなすため、「みなし相続財産」と呼ばれています。しかし生命保険金(死亡保険金)全額に相続税がかかるわけではなく、非課税枠が設定されています。

非課税枠は「法定相続人数×500万円」です。非課税枠内の金額であれば相続税はかかりません。非課税枠を超えた場合に、超えた分に対して相続税がかかってきます。

生命保険の相続税控除額計算方法

ケーススタディ

例として夫と妻と子2人の家族4人で、夫が亡くなったケースで見ていきましょう。

夫は生前から生命保険に加入しており、受取人を妻としていました。死亡保険金額は1,000万円です。死亡保険金は受取人である妻の財産となりますので、子2人と分ける必要はありませんし、遺産分割協議書に記載する必要はありません。

相続税の計算の際には、死亡保険金1,000万円(みなし相続財産)を計上する必要がありますが、死亡保険金には控除額があります。控除額は相続人の数×500万円です。今回は相続人は妻と子2人ですから控除額は1,500万円となります。死亡保険金が1,500万円までは非課税となりますので、今回は課税対象とはなりません。

ケーススタディ

次の例として同様に夫と妻と子2人の家族4人で、夫が亡くなったケースで、生命保険金額が2,000万円だった場合を見ていきましょう。

生命保険の受取人は妻で、金額は2,000万円です。金額にかかわらず死亡保険金は受取人である妻の財産となりますので、子2人と分ける必要はありませんし、遺産分割協議書に記載する必要はありません。ここまでは前回のケースと同じです。

相続税の計算の際には、死亡保険金2,000万円(みなし相続財産)を計上します。控除額は相続人の数×500万円ですので、今回も1,500万円となります。死亡保険金が1,500万円までは非課税となりますが、非課税枠を超えた分に関しては課税対象となります。今回は生命保険金2,000万-控除額1,500万=500万円が課税対象となります。

生命保険の契約人によってかかる税金が異なる

税金

前述したとおり、生命保険は相続税の対象ですが、相続税の対象となるのは、亡くなった人(被相続人)が自らを被保険者として契約をして、受取人を相続人に指定していた場合のみ、みなし相続財産として計上する必要があり、相続税の対象となります。

契約形態によって、相続税の対象ではなく、所得税の対象であったり、贈与税の対象になったりします。契約している人と、被保険者、保険金受取人の関係性でどの税金に該当するかが変わりますので、解説していきます。

契約者と被保険者が同じ人で、受取人は相続人の場合

契約者と被保険者が同じ人で、受取人が相続人に指定されている場合には、みなし相続財産となり、相続税の対象となります。

夫と妻、子Aの3人家族で例を挙げてみます。
夫が自らを被保険者として生命保険契約を締結し、生命保険金の受取人を妻にしました。
この場合、夫は契約者であり、被保険者でもあります。妻は受取人です。

同じ家族で受取人が妻ではなく子Aに指定されていた場合も同様に考えます。
この場合、夫は契約者であり、被保険者でもあります。子Aは受取人です。

相続でよくあるケースがこのパターンですね。これは相続税の対象となります。

契約者と被保険者が異なり、契約者が受取人の場合

契約者と被保険者が異なり、契約者が受取人の場合は所得税と住民税が課せられます。相続税はかかりません。

夫と妻、子Aの3人家族で例を挙げてみます。
妻が夫を被保険者として生命保険契約を締結し、妻自身を保険金の受取人に指定しました。
この場合、夫は被保険者です。妻は契約者であり、受取人です。

この場合は夫の財産をもらったわけではなく、妻が契約していた保険金が入ってきたということですから、相続税はかからず、妻は所得税と住民税を払うことになります。

契約者と被保険者、受取人すべてが違う人の場合

契約者と被保険者、受取人すべてが違う人の場合も相続税はかかりません。この場合は贈与税がかかることになります。

例えば、妻が夫を被保険者として生命保険契約を締結し、保険金の受取人を子Aに指定した場合を見てみましょう。
この場合、契約者は妻、被保険者は夫、受取人は子Aとなります。契約者と被保険者、受取人のすべてが異なる人ですね。
この場合には子が贈与税を支払う必要があります。

生命保険金の相続手続き

保険

上記の通り、生命保険の契約人によって相続税の課税対象か否かが変わりますので、まず相続が始まった時には、契約者が被相続人であるか確認をしましょう。

生命保険自体は受取人の固有財産ですので、遺産分割協議もしなくてよいですし、相続手続きというよりも、死亡保険金をもらう手続きをとることになります。そして、死亡保険金の額を相続税算出の際に計上するという形となりますので、やることは下記の2つのみとなります。

  1. 死亡保険金の請求をする
  2. 死亡保険金を相続税に計上する

これら2つだけで相続手続きは完結します。これは契約者と被保険者が亡くなった方だった場合ですので、契約者と被保険者が異なる場合には、前述したとおり相続税に計上はせず、別途所得税や贈与税を納付することになります。

生命保険金の請求の流れと必要な書類一覧

いざという時のために、死亡保険金の請求の流れをご紹介します。知っておくだけで、スムーズに手続きができますので、事前に確認しておくと良いですね。

生命保険の死亡保険金請求の流れ

まずは加入している保険会社か代理店に連絡をします。連絡する際に聞かれるポイントは証券番号、亡くなった方の氏名、死亡日、死亡原因、入院・手術歴の有無、保険金受取人の氏名、連絡先などがありますので、保険証券を手元に準備して連絡することをおすすめします。

保険会社に連絡をすると、手続きに関する説明をしてもらえます。保険金請求書や必要書類等の案内もしてもらえますから、保険会社の案内に従って準備を進めていきます。

多くの場合、請求書類一式が生命保険会社から送られてきますので、それらと共に必要となる書類を送ります。

死亡保険金請求に必要な書類一覧

下記に一般的な生命保険金請求に必要となる書類を挙げました。各保険会社によって規定が異なる場合がありますので、詳細は保険会社にご確認ください。

死亡保険金請求書(保険会社から送付されるもの)
被保険者の住民票
受取人の戸籍抄本
受取人の印鑑証明
医師の死亡診断書または死体検案書
保険証券

上記の書類を保険会社に提出したのち、保険会社の方で調査が始まります。無事に保険金の支払いが認められると、受取人指定の銀行口座に死亡保険金が入金されます。

生命保険に入っているか分からないときに探す方法

探す

まずご自宅に保険会社からハガキや郵便物が届いていないかを確認します。生命保険証券が見つかればベストです。もし見つからなければ預金通帳などを見て、定期的に保険会社から引き落としがないか確認します。

これらを確認しても生命保険に加入しているかどうか分からないときには、生命保険協会の調査を依頼すれば、どこの生命保険に加入しているかが分かります。

生命保険契約照会制度で加入保険を探す

家中探しても亡くなった方がどこの生命保険に加入しているか分からなくて困っている方も多いですよね。

そんな時にどこの生命保険に加入しているか調べることができる制度が2021年7月から運用開始されました。「生命保険契約照会制度」です。

この制度は、生命保険協会に調査を依頼すれば、どこの生命保険に加入していて、誰が受取人になっているかを調べることができます。現状の利用料は3,000円ですので、使いやすい価格ですね!

契約者が亡くなった時以外でも、認知症などで判断能力が低下したときや災害時に契約者が行方不明になった時なども利用することができます。保険証券が自宅にない場合や生命保険に加入しているか否か見当もつかない場合には便利な制度です。

必要な書類を郵送すると約2週間で結果が通知されます。

政府広報オンラインのWebサイトで詳細が載っていますので、必要であれば下記リンクからご確認ください。政府広報オンライン

生命保険の死亡保険金は特別受益にあたる?

原則として、生命保険金の受け取りは特別受益にはあたりません。例えば兄弟間で兄と弟がいて、弟だけ生命保険の受け取りをした場合に、兄が不公平だ!特別受益だ!と主張しても、原則的には特別受益には該当しません。

しかし、最高裁判所の判例で、保険金の額や遺産に対する比率などからみて、保険金の額があまりにも巨額であったり、不公平が著しい場合には、例外的に特別受益に該当すると示しています。

特別受益にあたるケースはあくまでも例外ですから、個別具体的にケースを総合的に精査したうえで、特別受益になることもあるということです。

保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率,保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して,保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,特別受益に準じて持戻しの対象となる。

裁判所https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52421

特別受益に該当する場合には、遺産に持ち戻して分割することになります。

生命保険の保険請求権の消滅時効

生命保険の請求権は消滅時効があります。保険法に3年と定められており、3年経つと保険金の請求権は時効で消滅してしまいます。

一般的な保険商品は3年で消滅しますが、かんぽ生命の場合は時効が5年となっています。

自分が受取人になっている生命保険があるとは知らずに3年経過してしまった場合もあると思います。3年経過しても念のため保険会社に問い合わせてみることをおすすめします。支払ってくれるケースも多いので、あきらめずに連絡をしてみることをおすすめします。

まとめ:円満な遺産相続

死亡保険は自分が亡くなった後に、大切な人が生活に困窮することがないように加入することが多いと思います。いざという時に残された家族がスムーズに手続きを行えるように、加入している保険の詳細などは、生前から家族と共有しておいた方が良いですね。

特定の相続人に生命保険を受けとさせたい場合、残された他の相続人ともめるのを防ぐためにも、遺言書で持ち戻し免除する旨を記載しておくといいですね。

生命保険一つ取っても、相続を円満に進めるために遺言書を活用したり、専門家の意見を取り入れることは大切です。

当事務所では遺言書の作成サポートもしておりますので、お気軽にご相談ください。ご相談は無料で承っております。