お亡くなりになった方(被相続人)がiDeCo(個人型確定拠出年金)に加入していた場合に掛け金はどうなるのでしょうか?

最近は企業でも企業型確定拠出年金を導入している会社が増えていますね。その影響もあり個人でもiDeCoに加入している方がとても多いです。iDeCoの相続手続きはまだまだ知られていませんので、分かりやすく解説いたします。

iDeCoとは何?

老齢年金だけで生活していくのは厳しい現状があるとニュースで見たことがある方もいらっしゃると思います。確かに国から給付される老齢年金の額は決して多くありません。そのため、国だけに頼るのではなく、自分で資金を運用して将来にもらえる年金額を増やしていこう、という目的で生まれたのがiDecoです。

iDeCo(イデコ)は、老齢年金にプラスして、自分の老後の資金を自分で用意するための年金制度です。個人型確定拠出年金と呼ばれています。iDeCoでは、掛金、運用益、そして給付を受け取るときに、税制上の優遇措置が講じられています。

毎月自分が決めた掛金を積み立て運用していく制度で、運用が成功すればするほど、将来年金としてもらえる額が増えるという、将来のために自分で資産運用をする制度です。20歳以上65歳未満の方が加入できます。

掛金は少額から始めることができ、将来に向けて資産を築く手段として利用できます。税制上の優遇もあり、確定申告や年末調整で税金の軽減が期待できます。また、60歳以降には老齢給付金を受け取ることができます。

iDeCoは自分の将来のために賢く資産を築く手助けとなる制度ですので、人気の制度で活用されている方も増えています。

被相続人がiDeCoに加入しているか調べる方法

亡くなった方がiDeCoに加入しているか知らないケースもあると思います。その場合に加入しているか否かを調べる方法をご紹介します。

金融機関や証券会社のアカウント確認

被相続人がiDeCo口座を開設している場合は、関連する金融機関や証券会社のウェブサイトやカスタマーサービスで加入状況を確認できます。通帳に記帳をすれば毎月掛け金が引き出されていることが確認できますので、まずは金融機関や証券会社の口座の確認をしてみましょう。

手紙やハガキなど書類の確認

iDeCoに加入していると、運営管理機関からハガキや手紙などのお知らせが届くことがあります。銀行や信用金庫、損保会社などいろいろな運営管理機関がありますが、ご自宅に届いているハガキや書類をもう一度確認してiDeCoに加入しているかどうか調べてみるのが良いでしょう。

iDeCo加入者が亡くなった場合、お金はどうなるの?

iDeCoは個人型確定拠出年金ですので、60歳になるまで引き落とせません。60歳以降になると引き出すことができます。加入者が亡くなった場合には年齢に関係なく、60歳未満で亡くなった場合でも、60歳以降で亡くなった場合でも、積み立てたお金は遺族が「死亡一時金」として全額受け取ることができます。この死亡一時金は受取人の固有の財産となるため、他の相続人と分割する必要はなく、遺産分割の対象外となります。また、死亡一時金を受け取ることができる遺族も確定拠出年金法によって優先順位が定められています。

この「死亡一時金」は受取人固有の財産ですが、生命保険と同様に「みなし相続財産」として扱われますので、相続税課税対象となります。生命保険と同様に非課税枠が相続人一人当たり500万円設定されていますので、法定相続人の人数×500万円を控除することができます。「みなし相続財産」については下記の記事で詳しく解説しているので、よろしければご覧ください。

「一時死亡金」をもらうためには金融機関に給付申請をする必要があります。iDeCoを運用している銀行に問い合わせて給付申請を行ってください。受給権は5年で消滅時効にかかってしまいますので、なるべく早めに手続きをすることをお勧めします。

iDeCoの死亡一時金は誰がもらえる?

iDeCoの死亡一時金は遺族がもらえると前述しましたが、遺族の中で誰がもらえるのでしょうか。遺族であれば誰でも受取れるというわけではなく、受け取れる遺族の範囲および順位が法令により決められています。もし契約者が生前に受取人を指定していた場合には、その指定受取人が受け取ります。指定受取人が設定されていない場合には法定順位によって受取人が決まります。

第1位:指定受取人(指定されていた場合のみ)
第2位:配偶者(死亡当時、事実婚の状態にあった者を含む)
第3位:子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹であって、死亡した者の収入によって生計を維持していた者
第4位:第3位以外の者で、死亡した者の収入によって生計を維持していた親族
第5位:第3位に該当しない、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹

第3位と第5位には子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹がいますが、これは左から優先されます。子がいなければ父母が受取人となり、子・父母・孫・祖父母がいなかった場合に兄弟姉妹が受取人となることができます。もし子が複数人いる場合には子の数で等分します。

iDeCoの法定受取人は民法の規定とは異なり、確定拠出年金法で定められていますので、上記のように民法とはだいぶ異なります。配偶者は事実婚の状態にあった者が含まれますが、この場合には被相続人の収入によって生計を維持していた証明が必要となります。民法では事実婚は配偶者に含まれませんので大きな違いの一つとも言えますね。

iDeCoの相続手続き・死亡一時金の請求の流れ

iDeCo(イデコ)は前述したとおり、積み立てたお金を法定順位に従って順位が高い人が死亡一時金を受け取れるという仕組みになっています。ですので、受取人の固有財産となります。そのため遺産分割協議書に記載する必要もなく、ほかの相続人と分ける必要もありません。

イデコの死亡一時金をもらうには生命保険と同様に死亡一時金を請求する必要があります。請求先はiDeCoを運用している金融機関になります。またレコードキーパーと呼ばれる記録関連運営機関に対して「裁定請求」をする必要もあります。一般的な流れを下記に記しますのでご参考にしてください。

  • 金融機関に連絡し、加入者が死亡した旨を伝え必要書類を送ってもらう。
  • 金融機関に「加入者死亡届」と必要書類を提出する。
  • 「裁定請求書」とその他必要書類を提出する。(通常、レコードキーパーに送付しますが、金融機関によっては金融機関宛に送るよう指示がある可能性があります。金融機関の指示に従って裁定請求書を提出してください。金融機関から裁定請求書が届かない場合には、レコードキーパーに連絡してみましょう)
  • 1~2か月の間に受取人へ死亡一時金が支払われます。

手続きにはおおむね下記の書類も必要となりますので、あらかじめ準備しておくと手続きがスムーズに進められますよ。
 ・被相続人の戸籍謄本、相続人と被相続人の関係性が分かる戸籍謄本など
 ・受取人の印鑑証明書
 ・マイナンバーカードの写し

iDeCoは引き続き運用できる?

残念ながらイデコを引き続き相続人の口座に移管して運用することはできません。死亡一時金を受け取り終了する形となります。

iDeCoに対してNISA(少額投資非課税制度)口座は相続人が引き継いで運用することが可能です。ただし相続人のNISA口座で運用することはできず、課税対象の口座(一般口座か特定口座)での運用となります。NISAの相続手続きは下記の記事に載せておりますのでよろしければご参考にしてください。

「人生100年時代」といわれる時代ですから、老後の備えは大切ですね!
iDeCoは優遇装置もたくさんある制度なので、資産形成制度としておすすめです。
もし加入していたら、ご家族にしっかりと加入している旨を忘れずにお伝えくださいね。

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